2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

2/28 テトリスBGM

「コロブチカ」の題名をご記憶の方は、どのくらいいるだろう。どこかもの悲しい旋律のロシア民謡である。かつて小中学校の運動会ではフォークダンスの定番曲だった。男女が二重の輪で向き合い、足でリズムを取ったり手拍子を打ったりし、パートナーを替えて…

2/27 繰り返される戦争

第2次大戦下、ベラルーシに住む17歳の少女がナチスドイツとの戦いに志願し衛生係として従軍する。現場は悲惨だった。大勢の青年が兵士として送りこまれ、次々に倒れていく。あと数分の命の若者にキスをし優しく言葉をかける。それ以外、何の助けにもなれない…

2/26 ロシア大統領の2枚舌

ロシア民話には似たような話がいくつかある。愚直な青年が周囲にばかにされつつも、最後はお姫様と結婚したり財宝を手に入れたりする。こんな筋立てが広く伝承されるのは正直を旨とする国民性ゆえかと思ったが、指導者にはそんな気質はまったくないようであ…

2/25 プラスチックの今と昔

いまから半世紀以上前、1968年の週刊少年マガジンに「未来新聞」という特集が載った。21世紀の暮らしや技術を占うこの企画にあったのは「ハラペコ食品会社で、おいしい人造肉を売り出した」との一文。植物のタンパク質を原料に、大量生産を実現したという。 …

2/24 ロシアの国民性

白、青そして赤と3つの色が並ぶロシア国旗は17世紀末のピョートル大帝の時代に、定められたとの説が強い。軍事や行政で西欧化を推し進め、列強の一角に食い込んだころだ。その後、18世紀の女王エカテリーナ2世によって領土はさらに広がり、帝国は強大化した…

2/23 バットマン

広島県福山市のホームページを見て驚いた。こんな告知が載っている。米コミックの人気キャラクター、バットマンの舞台である架空の都市「ゴッサム・シティ」と、友好都市提携を結んだのだ。1939年にヒーローが誕生して以来、こうした事例は初めてだという。 …

2/22 複雑怪奇

昭和史の名言、いや迷言に「欧州の天地は複雑怪奇なる新情勢を生じた」という文句がある。1939年8月、突如として独ソ不可侵条約が結ばれたとき、退陣に追い込まれた平沼騏一郎首相が発表した談話のなかの言葉だ。「複雑怪奇」は流行語にもなった。 当時の日…

2/21 あさま山荘事件

50年前のきょう、世界が仰天した。ニクソン米大統領が、文化大革命の煙くすぶる中国を訪問し、北京で建国の父、毛沢東と握手を交わしたのだ。対立から融和の方針転換に、西側、特に日本の衝撃は大きかった。まさに、薮から棒、寝耳に水だったろう。 この人た…

2/20 銀座東芝ビル

小津安二郎監督の「東京物語」に、上京した老夫婦が義理の娘と都心を巡る場面がある。銀座で百貨店の屋上に立つと遠くに国会議事堂、手前に重厚感のあるビル。「モダンボーイで銀座っ子だった」(川本三郎著「銀幕の東京」)小津が選ぶ都会らしい風景といえ…

2/19 ロシア的魂

自前のコロナワクチンがあるにもかかわらず、ロシアの接種率は低い。欧州や日本は8割近くだが、ロシアは5割に満たない。世界平均を下回る。忌避の理由について、先立ってラジオで興味深い解説を聞いた。独特の文明観と強権的な統治の歴史が背景にあるという…

2/18 南京玉

「おつきさま、やねに、かくれんぼしてる」「おかあちゃんの手、つめたいね、おぶうちゃんの足、ぬくいでしょう」。詩人の金子みすゞは26歳で亡くなる直前、3歳の娘ふさえが口にするたどたどしい表現を手帳に書き留めていた。「南京玉」とのタイトルもつけた…

2/17 真鱈の鍋

魚偏に雪、と書いてタラと読む。先日、読売新聞の俳壇にこんな句が載った。「丸一匹捌くや母の寒鱈汁」。関東在住の男性の投句だが、古里は雪国だろうか。暦の上では立春は過ぎたが、まだ冷え込む。そんな晩は、今が旬の真鱈の鍋で体の芯から温まりたい。 寒…

2/16 藤井聡太の強さ

コンピュータによる最初期の「アート」は米ベル研究所のエンジニア、マイケル・ノル氏がつくったといわれる。1962年夏、巨大なコンピュータ「IBM7090」が点と線で描き出した図は、色さえつければ抽象画家のカンディンスキーの絵のように見える。 しかし、ノ…

2/15 ROC

「ROC」と聞いて、むかし人気のあった紳士服の安売りチェーン「流通卸センター」を思い浮かべる人もいるかもしれない。などという昭和の話はさておき、この略語はいま、五輪ニュースに頻出する「ロシア・オリンピック委員会」。世界が憂える3文字である。 国…

2/13 東京の大雪

東京の大雪は昔から世間を騒がせてきた。戦前の記録で有名なのは、1936年2月23日の積雪36センチである。本紙の前身、中外商業新報も社会面のほとんどが雪ニュースだ。「帝都の交通機関は雪に弱い」「各私鉄運休」「ポイントを守れ!東京駅必死の焚き火」。 8…

2/12 夏冬二刀流

わずか半年前のことだ。でも、かなり昔の出来事のように感じてしまう。昨年夏の東京五輪である。様々なすったもんだがあり、開催を巡って世間の賛否も割れた。それでも選手の躍動や、スタッフ、ボランティアのおもてなしに私たちは拍手を送ったものだ。 どこ…

2/11 ウクライナを巡る緊張

誰が祖国を二つに分けてしまったの。音楽バンド、ザ・フォーク・クルセダーズが1960年代に演奏した「イムジン河」の一節だ。朝鮮半島生まれの歌を元に松山猛さんが日本語詞を補い、今も広く歌い継がれる。題は分断ライン近辺を流れる実在の川を指す。 2002年…

2/10 熊本産アサリ産地偽装

「江戸前」といえば、古くは東京湾の奥、品川から深川あたりの沖を指した。手元の地図で見ると驚くほど狭いが、江戸っ子はこの海でとれた魚介類をありがたがった。物流や保存技術も今とは比較にならない時代。少しでも新鮮な魚を食べたいとの思いもあったろ…

2/9 トンデモ和食

バーベキューソースがかかった天ぷら、フルーツ入りの巻きずし、つゆがひたすら甘いうどん。海外のレストランで、こういう料理に出くわした人は少なくないだろう。誰が呼んだか「トンデモ和食」。日本人の想像に及ばぬ「日本の味」が、昨今は世界中にある。 …

2/8 アスリートの言葉

「ぼくが魔物だったかもしれないです」。こんな受け答え、なかなかできまい。北京冬季五輪のスキーのジャンプ男子個人ノーマルヒルで、金メダルに輝いた小林陵侑選手だ。競技後、五輪にすむ魔物の存在に、こう切り返したそうだ。自負と歓喜があふれる。 ジャ…

2/7 在宅型ケアの裏側

命を救い、生を手助けする立場の医師が、患者の家族に銃で打たれ命を失う。まさかと思う事件が埼玉県の住宅街で起きてから10日ほどたつ。亡くなった医師は地域をまわる訪問診療に熱心だったという。44歳。人として、医師としてまだやりたいことも多かったろ…

2/6 北京五輪開会式

北京冬季五輪の開会式を演出した張(チャン)芸謀(イーモウ)監督は色の使い方がうまい。デビュー作「紅いコーリャン」はセンセーショナルな内容が物議をかもしたが、それを強調したのが「赤」という色。花嫁衣装の赤い布、本来は無色透明なコーリャン酒ま…

2/5 ナポリかつ

岩手県花巻市にユニークな名所がある。いささか寂れた中心市街地の6階。エレベーターが開くと、そこは客がひしめくレストランだ。6年前に閉店した「マルカン百貨店」の大食堂だけが、別の会社の手でよみがえったのである。最近は全国にファンを持つ。 ラーメ…

2/4 北京五輪開幕

「夜深くして雪の重きを知り/時に聞く竹の折れる声を」。中国、唐代の詩人、白居易の「夜雪」の一節だ。当時、作者は左遷の身。冷たい夜具に寝付けず、窓を見ると外が明るい。しばらくして、竹の音に雪の多さを知ったと描く。寂しさがしんしんと伝わってくる…

2/3 ブルシットジョブ

「しない方がいいと思います」。この名言で知られるバートルビーは、米文豪メルヴィルが生み出した中篇の主人公だ。ウォール街の法律事務所に勤める書記だが、ある日突然、上司のあらゆる指示を拒みだす。動機は全くの謎。長く哲学者や作家の論争の的となっ…

2/2 追悼石原慎太郎さん

その強烈な個性と作品ゆえに、多くの称賛と反発をともに集めた。一橋大の在学中に発表し、芥川賞を受賞した「太陽の季節」は反倫理的な内容に文壇の一部が眉をひそめた。一方旧来の道徳を覆す作品世界に共感し、「太陽族」と呼ばれる若者たちも登場した。 作…

2/1 1票の格差

「要するに最初からなかったことにする、ということです」。学生時代に法学の初歩を学ぶ講義でのこと。先生が「無効」という言葉について解説したことを、かすかに覚えている。例えば売買契約が無効になれば買い手は商品を、売り手は代金を返還する必要があ…