2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

8/31

戦時中、時局にふさわしくないとして落語の53演目が上演自粛になった。でも軍人がお座敷に噺家を呼び、こっそり演じさせたこともあったという。外面ありきで内実は骨抜き。戦前の体制の一断面だろう。似たような体験談を哲学者の武田清子さんからも聞いたの…

8/30

NHKのドラマ「鎌倉殿の13人」に有力御家人の一人、三浦義村が登場する。鎌倉時代を舞台に傑作を著した作家の永井路子さんは、この武将をこう表現する。「権謀、といって悪ければ緻密な計画性に富み、冷静かつ大胆…」「およそ乱世の雄たる資格を余すところな…

8/29

きょうは72年前に文化財保護法が施行された記念日。そろそろ秋祭りの準備が始まるころであろうか。3年ぶりの再開を楽しみにしている人もいるだろう。ただ、いまも続くコロナ禍は無視できない。開催すべきか否か。迷っている主催者が多い、と聞いた。「子ども…

8/27

長い夏休みが終わり、新学期を迎えた地域もある。久しぶりに教室で会う級友と、おしゃべりがしたい。そう思える児童生徒は幸せだ。学校でつらい経験をしてきた子どもにとって、夏の終わりは追い詰められたような気持ちになる。作家の平野啓一郎さんは個人に…

8/25

早くから際立った能力を見せる子どもたちのことを「ギフテッド」と呼ぶ。囲碁界に現れた新星は先週、目標に「世界一」を掲げた。大阪の小3、藤田怜央君は史上最年少の9歳4ヶ月でプロ入りする。こうしたずぬけた才能を、横並び色の強い公教育の場でどう導くか…

8/24

女性の報道写真家の草分けとして激動の昭和期を記録し続けた笹本恒子さんが15日、107歳で亡くなった。子どもの頃、外で見つけた「戦争反対」と書かれ垣根に貼られた赤い紙を1枚持ち帰り母に見せると、「みんなはがして捨てなさい。主義者のしたことだから」…

8/23

「普通においしいです」。食事の席でこんな感想を耳にしたら、「普通とは何だ」と腹を立ててはいけない。発言の主が若い人なら、ほぼ最上級に近い褒め言葉だ。普通より特別を追い求めた世代と、普通が新鮮で大切と感じる世代。育った時代が言葉の意味を変え…

8/22

新型コロナと保険を巡る興味深いニュースを目にした。一つはスマホ決済PayPayで申し込めた「コロナお見舞い金」の販売停止、もう一つは日本生命保険が入院給付金の上限額を、10万円引き下げるといった内容だ。前者は第7波で感染者が急増し、あれこれ工夫した…

8/21

お盆が過ぎて、8月も残り少なくなった。気になるのが夏休みの宿題。とりわけ自由研究だろう。毎年夏に恐竜展が開かれ、親子連れでにぎわう。「恐竜の自由研究のコツ」という指南サイトもある。こちらの展示も親子連れで盛況である。都内で開催中の「妖怪展」…

8/20

児童書の「世界にはばたく日本力 日本の衣」にこんな文章があった。「世界から高く評価される日本人ファッションデザイナーの草分け的な存在が、森英恵です」。約60年前にニューヨークでオペラ「マダム・バタフライ」を見て、哀れな日本人女性の演出に衝撃を…

8/19

スポーツの原点である汚れない情熱とパフォーマンスが見る者を揺さぶる。その感動を共にし、国境や宗教を越え、平和で人権が守られる世界を築く。近代五輪はそんな理想から始まった。だが、大会の運営にはカネがかかる。1970年代には公費に頼り切り、時に大…

8/18

かつてオートバイはモラルや秩序への反発、自由への渇望、そんなものの象徴として描かれることが多かった。そんなイメージは遠い過去のものかもしれない。二輪各社は電動化シフトを急いでいるそうだ。今秋からより厳しくなる排ガス規制に対応するためだとい…

8/17

探査機「はやぶさ2」が小惑星「りゅうぐう」から持ち帰った試料の分析で、生命の源になる有機物や水が地球に届く仕組みが浮かび上がった。海洋研究開発機構などのチームは、サンプルから耐熱性に優れた「ケイ酸塩」と呼ばれる鉱物を見つけたという。これが熱…

8/16

北日本が繰り返し大雨に見舞われている。気象庁の特別警報は「数十年に一度クラスの異常で重大な危険」がさし迫った場合に発令されるが、制度開始からこの10年で出なかった年がない。列島各地で、異常気象の発生確率は天井知らずにみえる。自然災害を補償す…

8/15

77年前、東京大空襲で下町が焼けた。生き残った人は上野駅に集まり地下道で1千人が暮らし始める。1割か2割は親を亡くした子だ。家族を捜そうと上京むなしく帰る人が「代わりに食べな」とおにぎりをくれた。石井光太さんのルポ「浮浪児1945-」はそんな体験談…

8/14

2年前の春、イタリア人の知人にビデオ電話をかけた友人の話だ。イタリア人の彼はコロナ禍になってから毎日、ベランダでお隣さんとご飯を食べるのが日課になったそうだ。「無事を確認しあえるし、こんな時期だからこそ楽しく食事がしたい」。イタリアでは自然…

8/12

昭和レトロが人気を集めているらしいが、健康社会学者の河合薫さんによれば日本社会は昭和モデルのまま何も変わっていないという。岸田首相による内閣改造にも、その気配が漂っている。すべての派閥に目配りしたバランス重視の優等生人事。だが、女性は2人に…

8/10

きのう訃報が伝えられたオリビア・ニュートン・ジョンさんは、70年代「そよ風の誘惑」や「カントリー・ロード」など青春の愛唱歌でヒットを連発した。その後もロック調の「フィジカル」で爆発的なセールスを記録している。杏里さんの「オリビアを聴きながら…

8/7

先の大戦を顧みるはずの夏にあちこちで炸裂音が響く。中国軍は沖縄のすぐそばの海で弾道弾を放った。戦禍はひそやかにしかも急速に近づいてくるのを痛感する。かつて「人生二十五年」という標語があった。特攻や米兵との刺し違えで君らは20歳前後で死ぬだろ…

8/6

被爆から77年。原爆ドームのモニュメントとしての価値は一段と高まっている。核を弄ぶ権力者のどんな詭弁も、ドームの厳粛な無言を前にむなしく響く。原爆ドームは1950年代、取り壊しの議論があったが、建築家の丹下健三はここを起点に「平和の軸線」を定め…

8/5

日野自動車は「日野の一家主義」という社風を掲げ、上下がフランクに意思疎通し、研究熱心で全社員一丸になることを理想としていた。明るみに出たエンジン不正問題では、上層部の意向を絶対視する体質や部門間の連携不足が指摘される。理想との隔たりはなぜ…

8/4

日本の技能実習制度は途上国の人材育成に貢献する、という理念から始まった制度だ。でも人手不足の解消に利用されてきた。米国務省は世界の人身売買に関する報告で、これを「強制労働」の疑いがあると指摘した。悪質な仲介業者や雇用主の責任を日本政府が追…

8/3

1970年代、戦争の傷を忘れたふりをして生きる大人が大勢いた。吉田拓郎さんの歌「落陽」の一節にフーテン暮らしの老人が出てくるが、息子は戦争で殺され、自身は反戦活動で追われ妻にも逃げられ流浪の生活を送る男性がモデルだ。61年の三橋美智也さんの「雨…

8/2

小中学生の自由研究を応援する「自然科学観察コンクール」では昨年の応募が10年前よりも伸びた。コロナ禍でも子供の探究心は止まらないようだ。トンボの生態を観察したり、人工心臓を自作したり。今年も楽しいテーマを募集中である。かつて監獄で「ファーブ…