2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

4/24-30

4/24 積ん読の意義 4/25 司法と独立 三島由紀夫「仮面の告白」「法律と文学」 4/26 現代の御一新 島崎藤村「夜明け前」 4/27 宇宙旅行の夢 フレーベル館「はじめての宇宙旅行ガイド」 4/28 立ち並ぶ空き家 4/29 異次元緩和の功罪 4/30 自転車の楽しさ 松岡享…

4/30 自転車の楽しさ

うさこちゃんは自転車に憧れている。花が咲く野原を通り、きつい坂道をのぼり、おばさんの家でクッキーを食べる自分を想像する。「はやく おおきくなりたいな だって、じてんしゃに のるのは たのしいもの」(「うさこちゃんとじてんしゃ」 松岡享子訳) 「…

4/29 異次元緩和の功罪

俳人の金子兜太さんは日銀マンだった。戦争中に東大を出て入行したが、3日で退職した。海軍士官を志したためだ。本人いわく「笑ってしまうほど軽薄な決断」から南方戦線への赴任を希望し、主計中尉としてトラック諸島に送られた。待っていたのは地獄だった。…

4/28 立ち並ぶ空き家

もしも私が家を建てたなら。歌手、小坂明子さんの「あなた」は、そんな1行から始まる。作詞作曲を手がけたのは当時まだ高校生だった小坂さん自身だ。今から50年前の1973年に発売されて大きなヒットとなり、翌年のNHK紅白歌合戦でも歌声を披露した。 「私なら…

4/27 宇宙旅行の夢

「みなさんは、宇宙に行きたいですか?」。今年発売になったばかりの児童書「はじめての宇宙旅行ガイド」第2巻はこんな問いかけから始まる。行きたい人も、迷っている人も手引書として活用してほしい。同書のメッセージは、急速に進む宇宙開発のいまを映す。…

4/26 現代の御一新

島崎藤村の「夜明け前」には「御一新」なる言葉がしきりに登場する。幕末から明治にかけての変革を、当時の人々はこう呼んだのだ。それをのちに新政府が、中国古典由来の「維新」に置き換えた。この大河小説でも終盤には「維新」の語が目立つようになる。 さ…

4/25 司法の独立

三島由紀夫の「仮面の告白」には、作家の東大法学部時代の体験を反映したと思われる記述がある。「私はまた六法全書に八つ当たりして、それを部屋の壁に投げつけた」。空襲下で平和を説く国際法の教授の講義を「耳鳴りとしか思えなかった」と批評するのだ。 …

4/24 積ん読の意義

読書には3種類ある。朗読、黙読、積置だ。江戸時代、すでにそんな分類法があったという。明治に入って、「置」の代わりに「読」の字を当てた「積読」の表記が現れる。未読の書を抱え込む積ん読の歴史は古い。東京都立中央図書館の公式サイトで知った。 同図…

4/23 ロボットにない弱さ

見た目は大きな木綿豆腐だ。そっと押すと確かにあの手触り。台の上に鎮座した白い物体が小刻みに震え、何やらうなっている。例えるなら長年、家族同様に暮らしてきた犬が、人間の言葉を話しているつもりで懸命に訴えかけてくる。そんな時の声といったらいい…

4/22 短大というカルチャー

短大は戦後という時代の落とし子である。1949年、新制大学がスタートするときに旧制の専門学校などの多くが四年制転換の条件を満たせなかった。しかし、戦前の制度をそのまま残すわけにもいかない。そこで当時の専門家が頭をひねり、暫定措置を講じたのだ。 …

4/21 スーダンの子どもたち

内戦の末に南北スーダンに分離し、別々の国として歩み始めたのは2011年7月のことだ。日本は東日本大震災の直後だった。紛争と天災、共に惨禍からの復興をめざし互いに励ましあおう。そんな思いを込めて当時、スーダンの子供らを招くイベントが企画された。 …

4/18-23

4/18 民主主義を守るために 4/19 歌舞伎町の今と昔 4/20 2024年問題 4/21 スーダンの子どもたち 川原尚行「行くぞ!ロシナンテス 日本発 国際医療NGOの挑戦」 4/22 短大というカルチャー 4/23 ロボットにない弱さ

4/20 2024年問題

学生時代、お中元配達のアルバイトをしたことがある。報酬は1個あたり百数十円。親に拝借した車にエアコンがなく、暑さに閉口した。当然カーナビもないので住宅地図が頼りだ。前夜のうちに配送ルートを決め、荷物の積み方を工夫するようになって少し効率が上…

4/19 歌舞伎町のいまと昔

新宿・歌舞伎町に「ミラノボウル」という終夜営業のボウリング場があった。飲みすぎて終電を逃し、友人と始発までゲームに興じた。外に出るとカラスがゴミをあさっている。朝の光がまぶしい。駅には通勤客が行き交う。遠い記憶の残像を懐かしむ方もおられよ…

4/18 民主主義を守るために

10年ほど前、フランス西部の地方都市で美術館を訪れた。平日の日中の展示室には筆者ただ1人。モネやルノワールの絵がガラスやアクリルのカバーなしに掛けられていて、絵の具のうねりや迫力ある筆致をじかに見られた。しかもその場に1人の監視員もいないのだ…

4/10-4/16

4/10 人手不足と年収の壁 4/11 ソロ活進化論 日経MJ「ソロ活進化論」 4/12 検察官の責任とは 4/13 犯罪の国際化 4/14 人工知能と職業、言葉 三省堂「三省堂国語辞典から消えたことば辞典」 4/15 社会とファッションの共振 中野翠「あのころ、早稲田で」 4/16…

4/16 直筆の文字が持つ力

先週末、法事で京都に出かけた。境内の咲き残った枝垂れ桜に、キツネの嫁入りが降りかかる花冷えの一日。浄土真宗一派の古寺で南無阿弥陀仏を聞く。折しも、親鸞聖人の生誕850年を記念する展覧会が開かれているというので、そのまま国立博物館に足を向けた。…

4/15 社会とファッションの共振

文学評論家の平野謙は明治大で教えるかたわら、早稲田に出講していた。1965年の春、その教室に現れるなり、女子学生の姿を認めて言い放ったという。「政経学部は男ばっかりだったから、私は好きだったんだ。それが女も入ってくるようになって…不愉快だ」。 …

4/14 人工知能と職業、言葉

先週発売された「三省堂国語辞典から消えたことば辞典」が面白い。コギャル、メーンエベント、MD(ミニディスク)。まぶたに昭和や平成がよみがえる項目が並ぶ。1960年代「IBM」は、コンピューター一般を指した。言葉は世につれ、である。 辞書の改訂は仕事…

4/13 犯罪の国際化

カンボジアの世界遺産、アンコールワットには日本人が残した「落書き」がある。よく知られているのは肥州出身の武士、森本右近太夫一房の墨書。「寛永九年(1632年)初めて此処に来る」と書き出し、4体の仏像を奉納したことなどをつづっている。 この地を仏…

4/12 検察官の責任とは

司法記者だったころ、刑事裁判をよく傍聴した。証拠調べが終わると、検察官が被告人をどの程度の刑にするのが妥当か、意見を述べる。この紋切り型のセリフを何度聞いたことか。「被告人は罪責を逃れることに、汲々とし」。真摯な反省がないと、糾弾するのだ…

4/11 ソロ活進化論

「SOLO DINING」に「DINE ALONE」。英語の訪日旅行ガイドを見ると、そんな見出しを掲げた飲食店特集を見かける。日本語にするなら、おひとりさま向けディナー案内という感じか。一人でもきちんとした夕食を楽しめる店を集めた紹介記事だ。 焼き肉、鍋、西洋…

4/10 人手不足と年収の壁

出張で利用した瀬戸内海のフェリーがずいぶん混んでいた。乗客の多くは訪日客。出航間際でもチケット売り場は長蛇の列で、駆け込み乗船が続いた。もっと便数を増やせばいいのにと時刻表を眺めたら、そこには小さな説明書きが。「人手不足で減便しています」…

4/9 東京の景観

「東京はすばらしい都市だ」「建築では、疑いもなく日本は最先端だ」。映像の詩人と呼ばれた映画監督、アンドレイ・タルコフスキーは訪日時の印象を日記に残した。「惑星ソラリス」(1972年)に、首都高速道路の映像を挿入した。未来を象徴する風景として。 …

4/8 ムツゴロウさん

会社を辞め作家になった後、ペットショップで一匹の秋田犬に出会った。周りをグルグル回ったから名前は「グル」。庭に犬舎を建てた。何を思ったか、自分も中で寝泊まりを始める。横になり抱き合ううちに、「切なさが増していき、相手がいとおしくなった」と…

4/7 義務と努力

雑誌のエッセーの執筆を引き受けたものの、アイデアが浮かばない。困った。なんとかこの義務を果たさねば。太宰治はそんな苦渋をそのまま随筆にしてみせた。いわく「義務は、私に努力を命ずる。休止の無い、もつと、もつとの努力を命ずる」。 「義務」と題し…

4/6 強権国家との闘い

その論文は祖国の弾圧を逃れた一人の亡命ミャンマー人の依頼から生まれた。応じたのは、朝鮮戦争時に兵役を拒み投獄された経験のある米国人政治学者。タイの雑誌に掲載され、1994年に小冊子となり軍政に抵抗する国内外のミャンマー人の間で密かに回覧された…

4/3-9

4/3 新入社員の旅立ち 映画「生きるliving」 4/4 坂本龍一さん 映画「ラストエンペラー」 映画「戦場のメリークリスマス」 坂本龍一「音楽を自由にする」 4/5 新社会人と庭仕事 鏑木清方「庭樹」 4/6 強権国家との闘い ジーン・シャープ「独裁体制と民主主義…

4/5 新社会人と庭仕事

週末の郊外のホームセンターは、花の苗木を品定めする人で大にぎわいだった。明るい黄色のパンジーやピンクの八重咲きのベゴニア。あでやかな花に目移りしつつも、結局、スミレの鉢を買い求めた。まだ花はない。うつむき加減の固いつぼみがいくつもついてい…

4/4 坂本龍一さん

日本人で初めてアカデミー賞作曲賞に輝いた音楽は極限の集中のなかで誕生した。映画「ラストエンペラー」のため、坂本龍一さんが制作にかけた時間はわずか2週間。ほぼ不眠不休だった。「地獄のような強行軍で仕上げました」。本紙の取材でそうふり返っている…