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イソップに「王様をほしがる蛙(カエル)」という物語がある。為政者がいないことに悩んだ蛙たちが、神様に王様をくださいとお願いに行く。神様はしょせん蛙のことだから、と最初は木切れをくれてやる。が、蛙は満足せず、もっとましな王様に代えてほしいとふたたび頼む。

▼愚かな蛙に腹を立て、神様は今度は水蛇をつかわしたので、蛙たちは残らず食われてしまった。大切な選択を他人任せにすると痛い目にあう、という寓話(ぐうわ)として伝わる。この国で投票率の低さが問題になって久しい。とりわけ若い人が投票所に行かない。しかし無関心のためかというと、どうもそうばかりではないらしい。

▼「自分の一票で国を間違った方向に向かわせたくない」。こんな風に回答する学生たちもいるのだと、数年前からアンケートを実施している花園大学の師(もろ)茂樹教授に教わった。政治について十分な知識もないのに、無責任に投票して誤った候補者を当選させてしまったらどうしよう――。真剣に悩むほど尻込みするそうだ。

▼選挙に正解があると信じている。この意外さにも驚かされた。そもそも正しい候補者選びというものはない。結果として選ばれた政治家が民意という「正しさ」をまとう。それが民主主義である。むろん自ら木切れや水蛇を選ばないよう勉強するのは大事だが、あとは堂々と一票を投じればいい。自信をもって飛びこもう。