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それは、「大西洋を越えた新旧両大陸のデモクラシーのシンボル」だった。1876年の建国100年を祝い、フランスから米国へ贈られた自由の女神像。像と台座の制作費用をそれぞれの国が負担し、労働者、移民、子どもらがわずかな金を出し合い、完成にこぎつけた。

18世紀に米国で独立の機運が高まると、フランスの義勇兵らが新大陸に駆けつけた。米国でいまも英雄視される貴族もいる。まもなく刺激をうけたフランスも市民革命を実現。ほぼ1世紀後、はるばる大西洋を渡った高さ50メートルの女神は、自由と民主主義の共有の証しだったのだ。(若桑みどり著「イメージの歴史」)。

ニューヨークで祝砲と歓声に迎えられた女神像に比べ、こちらはなんと危険きわまりなく無粋な贈り物だろう。きのう北朝鮮が発射した弾道ミサイルは日本の青森付近の上空をかすめ、太平洋に落下した。出勤・登校前の北海道や青森では、サイレンが鳴り響いたという。ただならぬアラートに背筋が凍る思いだったろう。

北朝鮮によるミサイル発射は、この10日間で5回目。暴挙は非難し続けなければならない。ちなみに自由の女神は米国以外にもあった。民主化の象徴として天安門事件さなかの中国で学生らが制作。が、まもなく戦車に破壊された。国際社会との共存を拒むかにみえる国々によって、アジアの海はかつてなく危険が増した。