12/4 民主主義とは何か

好き勝手、やりたい放題というほかない。米ツイッターを買収したイーロン・マスク氏である。「長時間猛烈に働く」ことに同意できない従業員はクビ、アカウントが本物だと保証するお墨付きを得たければ、利用者は毎月8ドル払え。ワンマンぶりが際立っている。

凍結したトランプ氏のアカウントを復活させたのには唖然とした。米連邦議会への襲撃を扇動した嫌疑はいまだ晴れていない。マスク氏は投稿内容が適切かどうか、当初は社内に評議会を作って審査すると言っていたのに、一転賛成か反対かの投票を自らのアカウントで実施し決めてしまった。52%対48%の僅差だった。

民主主義の正当な手続きに則ったつもりなのだろう。だが歴史上何度も指摘されたように、多数決=民主主義ではない。米独立宣言起草者の一人、トーマス・ジェファーソン大統領も就任の演説で語っている。「多数派の意志はいかなる場合でも勝利するが、その意志が正しくあるためには理に適っていなければならない」。

「民主主義とは何か」(講談社現代新書)に教わった。著者の政治学者、宇野重規氏は2年前に日本学術会議の会員に推され、政府の任命拒否にあった。それでも「民主主義の可能性を信じる」と所感を述べた。「民主的社会の最大の強みは、批判に開かれ、つねに自らを修正していく能力」にあると。改めてかみしめる。