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・きょう1月17日は、阪神大震災から28年。

・近代以降の日本で最悪の人的被害をもたらした関東大震災から100年でもある。

阪神忌」は冬の季語である。阪神大震災が起きた1月17日を指す。3年前の日経歌壇にこんな句が載っていた。「残しある崩れし埠頭阪神忌」(広田祝世)。遺構として残る神戸港メリケン波止場を詠んだのか。6千人超が亡くなった震災から28年がたった。

駆けつけた被災地で目の当たりにした光景は忘れがたい。倒壊した高速道路やマンション、見渡す限りが焼失した市場の跡。まだ携帯電話は普及しておらず、公衆電話の前には不安げな顔が延々と続いた。年月を経て神戸は美しい港町のただずまいをとり戻した。が、目をこらせばあちこちに古傷が残っているはずだ。

発生時刻の5時46分に合わせ、被災地は鎮魂の祈りに包まれることだろう。「忌」の字を上と下に分けると「己の心」と読める。それぞれが自身の胸のうちに抱えている悲しみや追慕の念、悔悟と向き合い、未来への誓いをあらたにする。忌日とはそんな時間ではないだろうか。2ヶ月ほど後には「東北忌」が控える。

季語を地名に冠さない「震災忌」もあり、これは秋である。9月1日。近代以降の日本で最悪の人的被害をもたらした関東大震災から、ことしでちょうど100年となる。「ぢぢばばがわがこと語る震災忌」(山口青邨)。子から孫へと受け継がれてきた災禍の記憶と教訓を次の世代につなぎ、備えの強固な礎としたい。