3/4 新幹線の未来

整備新幹線の工事が滞りを見せている。札幌への延伸は費用が6000億円超のオーバーで、2030年の開業も危ういらしい。敦賀と新大阪間の着工も遅れるとか。かつて描いたグランドデザインが効能を失いつつあることはうすうす気づいていよう。今こそ冷徹に費用と便益を計るときだ。

 

その記念プレートは、JR東京駅18、19番ホームの下の壁にはめ込まれている。「東海道新幹線 この鉄道は日本国民の叡智と努力によって完成された」。営業開始1964年10月1日ともある。夢の高速鉄道を実現させた誇りと喜び、時代の熱気までが伝わってくる。

東京と新大阪間の工期は5年5ヶ月だった。背景には戦前からの弾丸列車計画で一部の用地が買収済みだったことや、トンネルの掘削が進んでいた事情があったそうだ。甚大な経済効果と高い安全性を兼ね備えた超特急。1970年には全国新幹線鉄道整備法ができ、線路網が延びていく。右肩上がりの世のシンボルである。

ところが、ここ最近、資材高などから整備新幹線の工事が滞っている。札幌への延伸は費用が想定よりも6000億円超も上回り、2030年度末の開業も危ういらしい。狙いを逃さぬ「はやぶさ」の列車名が泣こう。今春に予定されていた敦賀と新大阪間の着工もずれ込むとか。西九州ではレールの規格などを巡り、地元が反対する。

急速な少子高齢化で、かつて描いたグランドデザインが効能を失いつつあることは、誰もがうすうす気づいていよう。国や自治体の財源が限られる中、冷徹に費用と便益を計る「叡智と努力」そして勇気が、今こそ必要と思える。「ひかり」や「のぞみ」そして「かがやき」が失せた列車が走る世に立ち会いたくはない。