3/22 WBC準決勝

突き放され、追いつきかけるものの手が届かず、同点になるがまた離され。きのう放映された一つの試合が何人の人をやきもきさせ、最後に歓喜を与えただろう。米マイアミでのワールド・ベースボール・クラシックWBC)の準決勝、日本対メキシコ戦の話だ。

6対5で日本の勝ち。そんな一行では、4時間近い試合のうねりはちょっと伝わりそうにない。録画の倍速視聴でも難しそうだ。九回裏に逆転勝利を決める一打を放ったのは、最近いまひとつ不調とされてきた選手である。映画や芝居の脚本なら「こんな展開は都合が良すぎる」と没にされるのではないか。それほど劇的だった。

良い試合は良い対戦相手がいて成立する。メキシコ代表には、ふだんはお隣の大国、米国でプレーする選手が多い。10代の頃に父を亡くしキューバに亡命したメンバーもいる。さまざまな背景や願いを背負う真剣勝負。メキシコの監督が日本代表を称賛しつつ、「野球が今夜の勝利者だ」と語ったのも分かる気がする。

きょう米国との決勝戦を待つ。五輪を含め、かつてスポーツの海外遠征は大ごとであり選手の顔は堅かった。きのうの試合で若い選手らは生き生きとのびやかに見えた。それがチームワークを生み実力を発揮できた面もありそうだ。世界という舞台でも臆さない世代の台頭がうれしい。決勝もその姿勢を崩さないでほしい。