3/23 WBC優勝

「塁球」に「底球」さらには「打球鬼ごっこ」。明治初期に伝わったこのスポーツを、どう訳すのかなかなか定まらなかった。ようやく「野球」という訳語ができたのは明治27年(1894年)。旧制第一高校のベースボール部が部史をまとめていたときのことという。

国内の強豪とされた一高は、横浜の米国人チームと試合して大勝する。驚いた米側は、寄港していた艦隊から精鋭を補強して再戦に挑むも、またもや敗退。3戦目も一高が勝利した。自らも一高の野球部で活躍し、日銀に努めた君島一郎氏の1972年の著書「日本野球創成期」で紹介しているエピソードだ。

侍ジャパンWBCで米国代表を下し、優勝をはたした。ヌートバー選手のはつらつとしたプレーで、日本中が笑顔になって始まった今大会。最後は大谷翔平選手がエンゼルスの同僚トラウト選手を三振に切って取り、劇的な幕切れを迎えた。スタジアムが地鳴りのような歓声に包まれ、テレビの前で多くの人が涙した。

かつて日本の野球は一高が米国人チームを破って大いに盛り上がり、各地に広まった。きのう大谷選手は米国代表との決勝前「憧れるのはやめましょう」とチームの仲間を励ました。いま、みんなが憧れるのは侍ジャパンのメンバーたちだ。全国の球児たちと、日々を生きる私たちに勇気を与えてくれた活躍に感謝を。