5/24 外国人との共生

先ごろ甲府市山梨県立美術館がユニークなイベントを開いた。県に所属する国際交流員とコレクション展をめぐる日本語のギャラリーツアーだ。興味を引かれて、「言葉の響きが好き」で日本語を学んだというブラジル出身のヂエゴ・ラモスさんの回に参加してみた。

「洋風の朝食と日本的な菊の花が同じテーブルに並んでいるのがおもしろい」。終戦後に地元の画家が描いた食卓の情景についてそう感想を話す。画面から連想した母国の詩をポルトガル語で披露すると、参加者のため息がもれた。「いつもの絵がちがって見える」。美術館で解説ボランティアを務める女性が驚いていた。

昨年の県内の在留外国人は中国4000人、ベトナムとブラジルの3000人を筆頭に1万8000人超。労働者数は10年前の2.5倍に急増した。一方で「職場や地域で外国人が持ち前の能力を活(い)かし、日本人も刺激を受けつつ共生していく社会にはまだ道半ば」。今年改訂した「やまなし外国人活躍ビジョン」が記す。

全国各地でいまや多くの外国人が暮らし、働くようになった。隣人として受け入れる工夫は足りているだろうか。たとえば文化施設の多くも、まだ日本人だけを利用者と見ている気がする。「日本語が母語でない人も気軽にこられるプログラムがない」。ツアーを企画した学芸員の下東佳那さんの言葉にはっとさせられる。