5/29 互いの信頼関係

よく行くスーパーに、あさりの姿を見かけなくなってから1年以上がたつ。最初はこんな長引くとは想像しなかった。熊本で発覚した産地偽装をきっかけに、なぜか他の国産あさりまでことごとく店頭から消えた。たまに見かけても粒が小さく高いので手が伸びない。

おかげで好物のボンゴレも酒蒸しも味噌汁も食卓に上らなくなった。正直に中国産と書いてあっても当方は構わず買うのだが、世間はそうではないらしい。表記を「熊本」から「中国」に改めたとたん、売り上げが激減し販売を諦めたという豊洲市場の記事を思い出した。見た目も味も同一のあさりのはずなのだが。

海はつながっている。産地の国名だけで売れなくなるというのは、つまるところ「あいつのとこは信用ならん」という相手への不信が原因だろう。こと口に入る物の問題になると人は理屈よりも感情が勝るように思う。先週、韓国から福島の処理水放出の安全性を確かめるため視察団が来日した。原子力放射線の専門家たちだ。

冷静に調査結果が検討されるなら、結果は科学に基づく妥当なものになるはずだ。あとは日本への信頼を、かの国の人々が抱いてくれるかどうか。安全は科学的知見で保証できても、安心は互いの信頼がなければ生まれない。だとすると、手ごろで身がぷっくりしたアサリが手に入るのは、当分先になりそうである。