6/7 花暦が狂う

1週間前、取材の合間に東京・日比谷公園に足を運んだ。今年は開園120周年とか。いま時分は春バラが見事だろうと期待したが、花壇はずいぶん寂しい。あらかた花びらは散り、しぼんでいた。例年よりも見ごろが2週間ほど早く、大型連休にピークを迎えたそうだ。

代わって迎えてくれたのがアジサイだ。鮮やかな青やピンクに目を奪われた。でもこんなに早かったかな。公園の事務所に聞くと、さまざまな花が前倒しで咲いているらしい。そういえば春はソメイヨシノが異例の早咲きで、各地の花見イベントが対応に苦慮していた。花暦があてにならない。気候変動の影響だろうか。

環境省のサイトが、伊藤久徳・九州大名誉教授によるソメイヨシノの開花時期のシミュレーションを紹介している。温暖化が続けば、2100年には九州から東北南部までいっせいに開花するようになる。冬の寒さが足りず花芽の成長が遅れる地域があるためだ。バラやアジサイの体内時計も徐々にずれていくかもしれぬ。

牧野富太郎がかつて「日比谷公園全体を温室にしたい」と書いている。バナナやマンゴー、パーム(ヤシ)を植えて熱帯地方の気分にひたってもらう。何とも壮大な構想である。予算もないので「当分は問題にならん」が結論だったが、このままだと日本中が……。もちろん、博士だってそんな風景は見たくないだろう。