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「奇々怪々」とはこのことだろう。中国の著名テニス選手、彭帥さんをめぐる騒ぎである。今月初め、彭さんは短文投稿サイトで共産党元幹部との不倫関係を告白した。即座に文章は削除され、消息は途絶え、やがて動向が伝えられたものの不自然さがいっぱいである。

元幹部からの強要もともなっていたとされるが、事実関係はわかっていない。投稿の経緯も謎だ。そして2週間に及ぶ失踪劇の末に、共産党系メディアの編集長が、彭さんの近況と称する動画を一般国民には禁じられているツイッターで公開した。こういうときにぴったりなのは「権謀術数」という四字熟語かもしれない。

事件は世界中の注目を集め、2ヶ月あまり後に控えた北京冬季五輪にも影響が及びそうな情勢だ。そんななかで策を弄し、こんどの騒動そのものをうやむやにしたいのだろうか。そもそも、新疆ウイグル自治区の人権抑圧などで逆風の強まるこの五輪である。平和の祭典らしからぬ「一触即発」の言葉が頭に浮かぶ。

もっとも、中国には国際オリンピック委員会IOC)なる強力な援軍がいる。バッハ会長は、ビデオ通話による彭さんとのやりとりで「自宅で安全かつ元気にしている」と説明を受けたという。監視下での発言の可能性もあるのに、なんと緩い対応か。とにかく大会を開きたいがための「軽慮浅謀」というほかない。