1/29 テクノロジーの暴走

真夜中に突然、自宅を出るよう命じられバスで隔離施設に移された。急なロックダウンで初対面の人の家に閉じ込められた。食料を買うための外出も許されない。北京冬季五輪を目前にこの1ヶ月、これぞ強権国家という中国の姿がメディアを通じあらわになっている。

国の威信をかけ、あらゆる手段を用いて「ゼロコロナ」を貫くつもりらしい。生活に多大な困難が生じても国民が黙って従うのは、警察とテクノロジーによる監視が隅々まで行き渡っているからだろう。中国内の監視カメラは4億台とも言われる。人工知能をもつ「天網」という名のネットワークが、14億人を見張る。

中国人作家、王力雄の「セレモニー」は、この現状を予見したかのような恐るべき小説だ。舞台は北京万博を控えた近未来の中国。「パンデミック」を機に自らの権力基盤を永遠のものにしようと企む共産党指導者が登場する。彼の武器は最先端技術を駆使した監視システムである。

これを手中に収める限り、体制は安泰と見えたが。今日、世界で技術が独裁を支える光景が目につく。そこには大きな弱点がある、と王は作品のあとがきで指摘する。独裁者は最新テクノロジーを「自分では理解も管理も運用もできない」からだ。物語は大崩壊で幕を閉じる。さて現実は小説よりも奇なりとなるか。