9/14

ダーウィンは22歳のとき、探検船ビーグル号で世界一周の旅に出た。太平洋上のガラパゴス諸島を訪れた経験がヒントになり、のちに「進化論」を唱える。イグアナ、ゾウガメなどが孤立した島で独自の進化をとげ、豊かでユニークな生態系を作っていた。

昨今、「ガラパゴス」には負のイメージがつきまとう。閉鎖的で時代遅れ。日本の技術やサービスが世界標準から取り残され、「失われた30年」の元凶とされた。が、「ガラパゴス化とは、決して遅れた進化でも、劣った進化でもない」と植物学者、稲垣栄洋氏は近著「生物に学ぶガラパゴスイノベーション」で説く。

それはむしろ、「オリジナリティに満ちた」「世界の常識をこえた」進化であると。日本人が15年続けてイグ・ノーベル賞に輝いたニュースを聞き、その主張もむべなるかなと頷いた。人を笑わせ、考えさせるテーマを大真面目に追究した業績に与えられる栄誉。まさに、オンリーワンの発想が生んだ偉業、と誇っていい。

ノーベル賞のように人類の発展に貢献することはないだろう。しかし、奇抜な発想や奇人、変人を許容する社会は間違いなく豊かで活力にあふれる。ダーウィンは「弱肉強食」「敵者生存」の生みの親と思われているが、実際にはリベラルで生き物に上下の差をつけるのを嫌ったそうだ。ガラパゴスはやはり楽園なのである。