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科学者にとって大がかりなシンポジウムに出席する意味は何か。立命館アジア太平洋大学出口治明学長が知人から聞いた話を本で紹介している。有名な研究者の発表より、休憩中に旧交を温めたり、隣の人と情報交換したりすることでの刺激の方が大きいそうだ。

出会い、雑談、無駄話。そうした「本当に研究の糧になるもの」がコロナによるオンライン化で消えたと嘆く。事情は学生も似る。特に今の2年生は入学以来オンライン。課外活動も難しく、3年生になれば就活だ。訴えたいガクチカ(学生時代に力を入れたこと)がなく、高校以前の体験の流用を覚悟している人もいる。

ワクチン接種の順番、飲食店や学習塾などのアルバイト先の減少含め、日本のコロナ対策は若者へのしわ寄せの上に成り立っていると改めて痛感する。文部科学省が受験生のワクチン優先接種を自治体に求め、一部で実際に始まった。よかったと思う一方で、「寒い冬に入試、春に入学」は変わらないのか、とも感じる。

東大の吉見俊哉教授の近著によれば海外の多く大学は9月入学で、年度が終わった6月、7月になると短期留学を受け入れる。日本の学生は前期試験で参加できず、結果的に「国内派」人材が増えるという。試験の時期を変える、3年生になる前に自由な1年を設けるといった工夫は不可能か。自粛世代の未来が気になる。