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最強の生物として近ごろ話題に上るのがクマムシである。体長1ミリ以下の微生物ながら100度の高温でも極低温でも生存し、人間なら即死する放射線量や水深1万メートル級の高圧でも平気。あまりの強靭ぶりに、隕石に乗ってやってきた地球外生命の説があるくらいだ。

実際、惑星とぶつかる衝撃にも耐えられるかどうか、英国ではクマムシを銃の弾丸に詰めて発射した研究者まで現れた。2年前、本気で月に送ろうとしたのはイスラエルの探査機だ。残念ながら着陸に失敗して月面に激突。さすがに無事ではなかろうが、ネット上にはきっと生きて繁殖しているとファンの声援が飛び交う。

愛好家ならずともこんな驚異の生命体を知れば、人類が永久に種の頂点に立つと思うのは間違いだと実感する。今、私たちは自らが招いた気候変動のせいで存続の危機にある。だが、温暖化で生態系が一変しても、クマムシのように逞しい生物がまた、新たな生態系を築くだろう。人類がいなくてもこの青い星は回り続ける。

だから地球環境を守るのは、ひとえに人類が生き延びるためだ。と同時に「強大な力には大きな責任がともなう」と主張してきたのは高名な動物学者、デイビッド・アッテンボロー卿である。先日も国連の温暖化会議で弁舌を振るった。「一丸となれば必ずこの惑星を救う力があります」。残り時間を無駄にはできない。