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「空から金が降ってきた」。1999年1月の本紙大阪夕刊に、こんな記事の見出しが出ている。島根県浜田市で、全国に先駆けて「地域振興券」の配布が始まったとのニュースだ。そう、あの商品券である。22年前、日本中にフィーバーを巻き起こした金券である。

15歳以下の子どもなどがいる世帯に、1人あたり2万円分のクーポンを配るという景気刺激策だった。総額は7千億円。配布場所の市役所や学校に行列ができ、海外メディアも好奇の目を向けたと当時の紙面にある。やがて効果も見えぬまま忘れられたが、それからも同じようなバラマキが繰り返し展開されている。

こんどは18歳以下の子どもがいる世帯に10万円を支給する施策を公明党が打ち出し、自民党と合意した。親の年収に制限をつけたものの、大半の世帯が対象になる設計だ。振り返れば地域振興券だけでなく、2009年には1人あたり1万2千円、コロナ禍の昨年は10万円の定額給付金が配られた。先導役はいつも公明党である。

きのう発足した第2次岸田政権だが、この連立相手のふるまいは正せないらしい。地域振興券の騒ぎのとき、まだ野党だった公明党への譲歩は「7千億円の国会対策費」と皮肉られた。そうした思惑のなかで何度も降る膨大な金。いずれツケが回ってくることを憂える声が大きくなっていることが、せめてもの救いだろうか。