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通勤の折、JR東日本の駅でポスターのペンギンが教えてくれた。「サービス開始20周年を迎えます」。交通系のlCカード、Suicaのことである。2001年11月18日、東京近郊の400超の駅で利用できるようになった。以来、各地で同種のカードの発行が続く。

首都圏の私鉄などで使えるPASMOJR西日本ICOKA(イコカ)、福岡市交通局は「はやかけん」と名付けた。すべて合わせ9月現在、累計発行数は2億枚という。地域以外で相互利用もでき、買い物にも使え、平成の間で外出の必需品となった。だが、ピッと通れる原理は意外に知られていないかもしれない。

英国の貧しい家庭に生まれ、働きながら独学した19世紀のファラデーの功績だ。電磁誘導である。改札の機器内にあるコイルには電流が流れ、磁力線が出る。これが薄いカードに埋め込まれたコイルに作用し、こちらにも電流が流れて磁力線が生じる。そんなやり取りで情報を交換しているそうである。目に見えぬ早業だ。

一方、今年は電車内での無差別刺傷や放火事件が続いた。「死にたかった」といった犯行の動機に世相の荒れを感じる。ピッと乗客の心情を推し量るすべはない。盾や防刃手袋の配備など安全対策を徹底するほかあるまい。利便性は向上したのに残念なことだ。カードで乗って、窓から逃げる。もう、繰り返したくはない。