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中国の四川省に「変面」という伝統芸能がある。仮面をかぶった役者が舞台に立ち、民族楽器の奏でる音楽に合わせて軽やかに舞う。くるりと回ったり、大きな袖で顔を覆ったり。一瞬のうちに別仮面になる。色とりどりのデザインは、喜怒哀楽を表しているという。

どう仮面を変えたのか、間近で見てもわからない。その早業に驚いて観客が拍手を送る。対してこちらは目にしたくもなかった変化だ。またも変異したウイルスが日本で確認された。社会や経済に瞬時に緊張が走る。感染者数の急減に安堵していた人々の表情が、みるみるうちに曇る。政治はこれにいかに対処するのか。

立憲民主党はきのうの臨時党大会で、泉健太氏を新代表に選んだ。2ヶ月前には自民党が、支持率が下がったときのお家芸で党の顔を変えてみせた。「まつりごと」という言葉の響きに照らせば、世の盛り上がりは自民党のときにおよばない。それでも新しい看板は、縮んだ党勢を立て直すきっかけにはなるかもしれない。

泉氏は「国民の目線で歩んでいきたい」と話す。与野党に対決はつきものかもしれないが、批判ばかりでは国民に寄りそえない。変面は演技が終わったあと、役者が仮面を外して輝く笑顔を見せる。マスクと決別し、心から笑える日のために政治の知恵を願う。コロナとの戦いに明け暮れたこの年も、残りひと月になった。