12/2

今年10月、首都圏で震度5強の地震があり、電車が止まった。タクシー待ちの長い行列にうんざりした方もおられよう。「帰宅難民」という言葉は、今さら説明不要だ。災害で公共交通機関が乱れ、人々が途方にくれる。10年前の東日本大震災を機に市民権を得た。

災いは新しい言葉を生む。「不要不急」「コロナ禍」「ステイホーム」…。文化庁が先ごろ発表した「国語に関する世論調査」は、そのことを裏付ける。新型コロナウイルスに関連して頻繁に用いられるようになった新語を6割強の人がそのまま使うと回答。「他の言い方をした方がいい」という人を大きく上回った。

恒例の新語・流行語大賞が、きのう発表された。大リーグを驚嘆させたMVP大谷翔平選手の躍動をたたえる「リアル二刀流/ショータイム」を選んだ。暗い世相のなか、私たちを勇気づけてくれる一服の清涼剤であった。昨年の対象は「3密」。一方、今年も引き続きコロナ関連の「人流」「黙食」がトップ10に入った。

思えば、これほど災いに関する多くの新語が日常に浸透するのは異例だ。選考委員のひとりは、「来年はコロナの影響が払拭され、勢いのある言葉が選ばれてほしい」と語った。来年のことを言うと鬼が笑う、という成句が会話に登場する季節だ。が、そう願わずにはいられない新変異ウイルスへの懸念がふくらむ師走だ。