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野球日本代表の監督に就任した栗山英樹さんが、自著にこんなことを書いていた。「自分が進退をかけることで、選手のためになれることがあるんだったら、そんな幸せなことはない」(「稚心を去る」)。さらに、責任は「取る」ものではなく「果たす」ものであると続く。

日本ハムを10年率い、その間最下位も経験した。負ければクビ、の厳しい世界。でも辞めればいいというものではない。重責を担う覚悟を常に持ち、チームを成長させる努力を尽くす。そんな意味と読んだ。「選手のため」の先にはファンの顔も浮かんでいたはず。指揮官としてどうあるべきか自問自答してきたのだろう。

同じような覚悟があったのか聞いてみたい。システム障害を繰り返したメガバンクの経営陣と無免許運転の罪で在宅起訴された元都議に、である。辞めるのは無理からぬこと。ただATMの前に立った利用者の不安や、すったもんだの辞任劇で有権者が抱いた都政への不信感はなお拭えない。辞めて一件落着とはなるまい。

脱税容疑で逮捕されたマンモス大学の元理事と彼の暴走を許した幹部らもしかり。大学が先週公表したコメントにはもっとも重要なことは「本学の体制変革」とあった。その言葉が実現して初めて責任が果たしたことになるのだろう。栗山監督が愛読する論語にもこう書いてある。「過ちて改めざる、これを過ちという」