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「聞く力」がご自慢の岸田首相は車座がかなりお好きなようだ。11月末の土曜日は午前に自衛隊員、午後にNTTの技術者と、2度もこのスタイルで対話している。閣僚や与党の幹部も手法を取り入れ、政権をあげて国民と目線を等しくし、注文を引き出す狙いだろうか。

この方式には、対話の深まりを通じて課題を共にし、互いの信頼感を高める効果もあるそうだ。古くから行われた平等で公正な統治のための知恵なのかもしれない。似たような円形でも、署名となると結束の度合いはぐっと増したらしい。多数がある契約を守る目的で一致、対等な立場で名を連ねた古文書が今も残る。

「傘連判状」と呼ばれるもので、寄せ書きに似ている。中世に入って血縁社会が崩れ、地縁と実力が頼りの中小の武士らがつくり始めた。みながひとつに、平和な自治を願う芽が14世紀ごろの歴史に見られるのである。「民主主義」をめぐり大国同士が非難し合っている昨今、ちょっと聞いてほしいエピソードではないか。

この連判状の形式、江戸時代の「百姓一揆」の際には別の役割も担った。誰が指導したのか隠す目的である。一揆の首謀者は極刑。苛烈な幕府や藩の追及を逃れ、社会の変革を目指すための決死の知恵でもあったろう。「西側諸国とは違う独自の民主主義」と自賛するかの国の方々には、さして参考にはならないだろうが。