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米国の児童文学「オズの魔法使い」の冒頭に中西部カンザス州での竜巻の兆しが描かれている。「ずっと北の方から、低くむせぶような風の音が聞こえてきて…」「ひゅうっと鋭い、口笛のような音が南の空から届き…」やがて、本体が襲った。

現地時間の10日夜から11日にかけて、カンザスの隣のミズーリなど各州で起きた数十の竜巻による被害は、「オズ」の表現をはるかに上回り、いくら言葉を費やしても惨状は伝えきれまい。住宅に加え、工場や倉庫などががれきの山と化し、年末商戦に向けて働く人らに多くの死者や行方不明者が出た。救出活動の結果を待ちたい。

寒冷前線の前面に、南から暖かく湿った空気が入り、激しい上昇気流で巨大な雲の塊「スーパーセル」ができたことが原因らしい。高さ10キロ以上にもなるこの怪物は、内部に回転運動を伴って、通常の積乱雲よりかなり寿命が長いのだという。人知では測り難い自然の猛威を前に、生活や事業の再建の苦労がしのばれる。

お話の方に戻ると、風に舞った「オズ」の主人公の少女は、仲間と力を合わせて未知の国を旅して、望みどおりふるさとに戻る。作者はこのおとぎ話に友情や助け合い、自己発見、そして「我が家の大切さ」といったテーマを込めたと伝わる。米国で最も愛されている一作は、復興を力強く後押ししてくれるに違いない。