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「短期間で自動的に消去されて復元できないようなシステムになってございますので、パソコン上にもデータは残っていません」。国会で森友学園に国有地売却の経緯を説明するように求めた野党議員に、こう答弁したのは当時の財務省理財局長。4年前のことだ。

紙の行政文書を廃棄しても電子データは残っているはず、と追及され釈明した。辛辣なネットユーザーは「自動的に消去って『スパイ大作戦』か」「バックアップデータがあるはず」などとコメント。当局の言い分を笑った。この官僚は、不適切な答弁を繰り返したとして辞任に追い込まれた。なにを守ろうとしたのか。

森友学園問題に関する財務省の決裁文書改ざんを苦に自殺した同省近畿財務局の元職員、赤木俊夫さんの妻が、国などを相手に損害賠償を求めた訴訟。おととい、国は一転して賠償責任を認めた。法廷での証拠調べを通じ、改ざんの全容解明を望んだ原告は「負けたような気持ち」と語った。なんとも唐突な印象の幕引きである。

でも、これですべて決着したわけではない。遺族はこの訴訟とは別に、財務省の調査に関連する一切の文書の開示を求めている。法律の定義によると公文書とは、「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」である。岸田文雄首相はきのう国会で「この問題と真摯に向き合う」と述べた。約束をどう果たすのか。