12/16

「統計」という言葉が世の中に定着するまでには、ずいぶんと曲折があったようだ。英語のstatisticsをどう翻訳するか。幕末に福澤諭吉がひねり出したのは「政表」である。ほかにもいろいろな造語が現れるなか、洋学者の柳川春三が「統計」を考えたとされる。

だから明治政府にははじめのころ、それぞれの語を冠した部署が併存した。しかしやがて「統計」が世間に広まり、大隈重信が統計院の院長に就く。早稲田と慶応の創始者はともに統計に深いゆかりがあるわけだ。国づくりの礎としてその重要さに目を向けていた彼らが、現代の役所の行状を知ったら大いに嘆くに違いない。

建設業の毎月の受注実態を示す基幹統計をめぐり、国土交通省都道府県にデータの書き換えを求めていたことが分かった。これにともなう二重計上も生じ、上振れした値が政策をゆがめていた可能性がある。8年間に及んだというが、ずさんなだけか、何らかの故意か。ひどく常識を欠いた組織であることは確かだ。

厚生労働省の「毎月勤労統計」で不正な処理が発覚したのが3年ほど前である。あの騒動を機に一斉点検したのは何だったのだろう。幕末・明治に考案された、かの翻訳語のひとつに「知国」というのがあったそうだ。さまざまなデータによって国を知る。ところが当節は、収まらぬ不祥事により国の劣化を知る。