12/18

捨てられない性分ゆえ、1年の整理を迫られる師走がくると憂鬱になる。先日、古本を整理していたら入社した1989年の米ライフ誌が出てきて読み返した。特集のテーマは「守るに値する101のもの」。編集者が主観で選んだ身近で大事なものリストだ。

個人経営の本屋、家族でのピクニック、続編なしの映画、手紙を書くこと、未舗装の道路、配達される牛乳等々。単なるものというよりも懐かしい記憶を呼び覚ます日常の風景が並ぶ。ダイヤル式の電話のように、その後ほぼ消え去った品もあれば、逆に復活したLPレコードもある。さて自分なら何を選ぶかと考えてみた。

謡曲、すし職人、紙の時刻表、小銭のやり取り、居酒屋で知り合った人との雑談、特に議題のない会議。いくつかは現代に必須のデジタル化や効率化、コロナ禍で広まった非接触の流れにも反する。百も承知で残したいと願うのは、時代遅れの未練にすぎないのか。ライフ編集者はこんな風に救いの手を差し伸べる。

ノスタルジアは私たちの錨である」。英文の難しい比喩をあえて超訳するならば「郷愁こそが、私たちをこの世界につなぎ留めている」だろうか。かけがえのない、失ってはいけないものがあるという感覚は、人を優しく謙虚にする。そう勝手に解釈してうなずく。手付かずのことどもを前に今年も残り2週間となった。