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「21世紀、最も魅力的な職業」。10年近く前、米ビジネス誌がそう呼んだ職業がデータサイエンティストだ。IT(情報技術)の普及で集まる膨大な数字を解析し、確かな判断へ経営者を導く。ここに優秀な人材を得られるかどうかで企業の命運は大きく変わるという。

成長中の動画配信会社、米ネットフリックスにもデータ分析の部署がある。新規採用候補者の中で最適な人材をどう選ぶか。ヒントを得ようと、すでに在籍する社員の中で特に優秀な人の共通点を探す。答えは音楽をこよなく愛する点だった。以降、面接では音楽への関心や楽器の経験などを、それとなく探るようにしたそうだ。

元最高人事責任者が著書で明かしたエピソードだ。論理的思考が軸になる業務だからこそ、創造性や感受性が発想の差を生む。議論好きが集まる職場には、無口だが独自の視点で発言する人を加えたこともある。こうして多種多様な人が集まり異文化への理解が育ち、「イカゲーム」などの非英語圏のヒット作に結びついた。

日本企業はどうか。面接担当者がしばしば語る採用の決め手は「職場になじむか」「一緒に働きたいと思えるか」。和を重んじる姿勢は、うっかりすると同質の集団を生む土壌となる。居心地はいい。しかし異論は芽吹きにくい。そうした環境で「業界に例のないイノベーションを起こせ」というのは、いささか無理がある。