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「青春時代に、人はたいてい恋をする」と漫画家の東海林さだおさんは述懐する。しかし入学した都立高校は戦前の男子校で新入生は男300人、女100人。全クラスの半分を占める男子だけの組で3年間を過ごし「女生徒と口をきくだけでも難事業」だったそうだ。

不均衡は女子の目にどう映ったか。後に同じ高校に通った作家の荻原規子さんが「樹上のゆりかご」で一端を描く。男子の無遠慮な視線が集まる。体育祭で危険な作業から排除されるなど、どこか女子をはじく空気がある。集団でのまとめ役は男子。お二人の同窓で男子クラスを経験した身としては、思い当たる節が多い。

男女同数にすると学力や進学実績が下がるから、という教師の説明を思い出す。それは生来の能力差か。四年制大学をあえて避け、女性の就職に有利とされた短大に進む同級生がいた。浪人をして難関校を目指す女子は珍しがられた。「いい大学を目指すな」という、男子と逆のプレッシャーを日々受けていたと今はわかる。

今年、都立高の男女別定員を段階的に廃止すると決まった。女子の合格ラインが男子よりも高い例が目立ち不公平とされたのだ。他の自治体と同様、性別を問わず成績で合否が決まることになる。近年は伝統校も女子への門戸を広げ男女半々に近づいていた。遠からず比率は逆転するかもしれない。変わる風景を歓迎したい。