12/29

男女対抗、つまり性別に基づく対戦形式は、体格や体力差が影響するスポーツでは成立しにくい。歌だからこそ男女平等のゲーム展開が可能となる。年末の風物詩、NHK紅白歌合戦は、女性の活躍という戦後民主主義の規範を体現したものだったという。

NHKアナウンサー、高橋圭三さんの述懐「紅白歌合戦創世記」などに当時の経緯が記されている。第1回放送は1951年だが前史がある。45年に「紅白音楽試合」がラジオ中継された。担当者がGHQに提出した企画案は「歌合戦」だった。が、軍国主義的だとして却下の憂き目に。名称を変更して放送が実現する。

価値観が揺れた時代。民主主義の教師・米国の意向を気にしながらの船出であった。あれから70年。今年の新語・流行語に「ジェンダー平等」が入選した。性的少数者を含め、すべての人が平等な機会と権利を持つという理念だ。出場歌手を「男女」に分けて競う演出を、見直すべきか。NHKも相当、悩んでいると聞く。

「出身地で東西対抗にしたら」「そこまで気にしたら何も楽しめない」。ネット世論も割れる。いよいよ押し詰まってきた。大みそかの番組表を眺めれば、今年も「孤独のグルメ スペシャル」が放送される。ひとり店に入り、思いを心の中でそっとつぶやく。孤独と他者への配慮。そんな規範が人々の共感を呼ぶのか。