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みそか首でも取ってくる気なり、なんて古川柳がある。歳末にツケ払いの催促に出向く商人の様子を詠んだ。戦国の武士よろしく、何がなんでも実をあげようと悲壮な覚悟がにじむ。お金が入ってこないと、自分の方だって年越しができない。懸命だったとみえる。

こうして経済は回り、暮らしは成り立っていたのだろう。一方、こちらは取り立てを怠っていたり、返済の努力が乏しかったりすると、ここまで膨らむという例か。今年、国と地方の長期債務は1200兆円を超えたという。ところが、重なった借金を賢く使い、成長の種をまき、果実を育てられたか、甚だ心もとない。

財政健全化の道筋も霧の中のまま、来年には人口の多い団塊の世代が75歳になり始める。社会保障費の増大は避けられないが、打つ手はあるのだろうか。先ごろ発表された日銀の統計では個人が保有する金融資産は2000兆円近くに上り、半分以上が現預金だそうだ。企業の内部留保は480兆円もあると聞く。

コロナの収束後をにらんで脱炭素やデジタル化にお金を導き、日本の浮上につなげるグランドデザインが、政治や経営に求められる。財政悪化の歯止めにもつながろう。江戸の商人の蛮勇より大切なのは知恵と戦略。さらに来年のえとにちなめば、1日に千里を行き千里を帰るというトラのスピード感か。よいお年を。