1/8 長引く冬ごもり

しんしんと雪の降る中、こたつにもぐって寒さをやりすごす。北国の長い冬をほうふつさせるのが「冬ごもり」の季語である。おととい東京都心のビル街が珍しく銀世界に変わった。雪国の厳しさとは比較にもならないがこの語の静かなひびきがふと心に浮かんだ。

冬ごもりには「静止的な物忌の禁欲生活」との信仰的な意味合いがあったと山本健吉著「ことばの歳時記」は記す。ある種の日常の行いを控えてけがれを落とす。ほとんど仮死に近い生活を送ることで体に神聖な霊力が宿り、発育が促される。生き物はそうやって冬を耐えしのぶので春を喜ばしく感じると日本人は考えた。

年末来の人の往来をなぞるように、新型コロナウイルスがふたたび活発化し始めた。変異型のオミクロン型は従来のものより重症化する例が少ない半面、感染力がいっそう強いという。人出が増えると、どうなるか。いままで何度も目の当たりにしてきた場面が、早回しの映画のごとく倍速であらわになっている。

澄んだ青空に誘われ初詣に出かけても、多くの人はマスクの着用など対策を欠かさなかったに違いない。しかし変異型はその隙をつき広がった。長引く「おこもり」にはため息も出よう。しかしここは浮かれず、騒がず、慎重に。これまでの知見や経験に学びつつ過ごしたい。冬ごもりのその先には、きっと春が待っている。