1/9 学び直しの喜び

本紙で最もムズカしいとも言われる「経済教室」面に、おっ、という方の名前を見つけた。「タッチ」などのヒット曲で知られる歌手の岩崎良美さんである。自らがいま取り組んでいる「学び直し」と将来の夢を5日付のコラム「私見卓見」に寄稿していただいた。

コロナ禍で公演の中止が相次ぐ折、高校卒でも受け入れる経営学の大学院を知り、昨年4月に入学したそうだ。ビジネスプランの資料をパソコンで作るなど2時間睡眠で奮闘。ゲーム理論や企業再生を学ぶうち、世の中の見方が変わり、コンサートの準備の段取りもよくなったとか。読む側もワクワクしてくる内容である。

リスキリングやリカレント教育といわれる学び直し。デジタルや脱炭素など主に技術革新に対応した人材を育て、生産性の向上を通じ、企業や働き手を潤そうという大きな動きだ。岸田文雄首相も「人への投資」を唱え、3年間で4千億円もの施策パッケージを用意、現在、制度設計に向け広く提案を募っているという。

生涯学習へ旗は既に振られているが、新たな装いの政策にする際に欠かせないのが、学ぶ側に喜びが実感できる仕組みかもしれない。岩崎さんは「自分で決めた学びにはつらさだけでなく楽しさもついてくる」と書いた。社会の要請とスキルアップへの思いが合致し、人生が豊かになり、経済の底上げもかなうのだろう。