2/2 追悼石原慎太郎さん

その強烈な個性と作品ゆえに、多くの称賛と反発をともに集めた。一橋大の在学中に発表し、芥川賞を受賞した「太陽の季節」は反倫理的な内容に文壇の一部が眉をひそめた。一方旧来の道徳を覆す作品世界に共感し、「太陽族」と呼ばれる若者たちも登場した。

作家であり、政治家であった石原慎太郎さんが亡くなった。生ぬるい世情にいらだち、挑むかのような姿勢が際立ったのが、その歯に衣着せぬ言動だ。「(社会は)軽薄な混乱の中にある。現行の政治にほとんど手をつけられないまま、政治家は最も卑しい利己的自己保身しかない」。衆院議員を辞職したときの言葉だ。

「NOと言える東京」を掲げて戦った都知事選では俳優の「石原軍団」を引き連れて選挙カーに上がり、「日本を立て直そう」と訴えた。聴衆の歓声を浴びる姿は、まさにスターそのもの。そして都知事時代に世間を驚かせたのが、尖閣諸島を都が購入する構想だ。ある人は喝采を送り、ある人は中国の反応に身構えた。

田中角栄の生涯を描いた「天才」が2016年にベストセラーになるなど、旺盛な執筆意欲は最近まで衰えることがなかった。昭和の終わりを目前に旅立った弟の裕次郎さんは、戦後日本の青春のシンボルともいうべき存在だ。慎太郎さんは高度成長にわきたつ日本のエネルギーそのままに、令和まで一気に駆け抜けた。