2/4 北京五輪開幕

「夜深くして雪の重きを知り/時に聞く竹の折れる声を」。中国、唐代の詩人、白居易の「夜雪」の一節だ。当時、作者は左遷の身。冷たい夜具に寝付けず、窓を見ると外が明るい。しばらくして、竹の音に雪の多さを知ったと描く。寂しさがしんしんと伝わってくる。

少し前の王昌齢は、都から離れた土地で不遇な自らの心境を「一片の氷が玉のつぼの中に浮いているかのように清らかだ」と詠んだ。雪や氷が作中に用いられたのは、その白さ、冷たさが、切なく純な作者の気持ちをあらわしてくれたからだろう。そんな詩情を伝統に持つ中国の首都北京で、きょうの夜、冬季五輪が開幕する。

踏み切り台から飛び出すジャンパーの時速は90キロ、スピードスケートの選手の最大時速は60キロ、アイスホッケーのパックは時に160キロを超えるという。さまざまな競技で、スピードと美技が見る者を異次元へといざなう。これも雪と氷の魔術であり詩情だろう。コロナ禍の鬱屈が晴れるようなフェアプレーに期待したい。

そういえば建国の父、毛沢東もいわゆる長征の途上、真冬の山河の絶景を詩につづった。秦の始皇帝漢の武帝もチンギスカンも文才に欠け詩心がない、なんてけなし、自らを真の風流人になぞらえた。雪と氷が演出した万能感のなせるわざか。どうか、今のトップも大会の超絶技巧に酔い、妙な野望なぞ抱きませんよう。