2/13 東京の大雪

東京の大雪は昔から世間を騒がせてきた。戦前の記録で有名なのは、1936年2月23日の積雪36センチである。本紙の前身、中外商業新報も社会面のほとんどが雪ニュースだ。「帝都の交通機関は雪に弱い」「各私鉄運休」「ポイントを守れ!東京駅必死の焚き火」。

80年以上も前から、似たような光景が繰り返されてきたわけである。そして関東のこうしたドカ雪の原因もまた同じ。いわゆる南岸低気圧だ。このときの紙面の、23日午後6時の天気図には八丈島付近に強烈な低気圧が見える。これが絶妙なコースで進んできたのに伴い気温も大きく下がり、東京は白魔に襲われたらしい。

往時に比べて観測技術はずいぶん発達したはずだが、この低気圧は今も悩ましい存在である。もしや大雪かと身構えた先週の木曜日は都心の積雪2センチ。前夜からの大騒ぎは雪国の人たちに笑われただろうが、条件が違えばどっと降ったに違いない。3連休明けの明日にかけても、また困り者が通過するから要注意だ。

36年2月の大雪は、昭和史の血なまぐさい出来事にも重なっている。まだ雪の多く残る26日払暁、陸軍青年将校らが総理官邸などを襲う。しかもこの朝から再び降雪しきり、二・二六事件のイメージが定着していった。中外商業の見出しは「雪の夜・戒厳令下の帝都」。南岸低気圧による演出が、悲劇性を際立たせている。