2/12 夏冬二刀流

わずか半年前のことだ。でも、かなり昔の出来事のように感じてしまう。昨年夏の東京五輪である。様々なすったもんだがあり、開催を巡って世間の賛否も割れた。それでも選手の躍動や、スタッフ、ボランティアのおもてなしに私たちは拍手を送ったものだ。

どこかの市長さんが、女子ソフトボール選手の金メダルをかじって物議を醸したその翌日。昨年8月5日にスケートボード男子の競技があった。冬季五輪スノーボードで2大会連続銀メダルに輝いた平野歩夢選手が、代表の座をつかみ「夏冬二刀流」に挑んだのだ。結果は14位。決勝進出は逃したが、攻めの滑りを貫いた。

本業のスノーボードでは、すでに安定した地位を築いている。北京五輪で悲願の王座を目指すなら、無謀な挑戦だ、とささやく人もいた。半年後の本番に向け、調整が遅れる懸念があるからだ。平野さんは、東京五輪の競技を終え、こんな謎めいたコメントを残した。「人はいろんな負荷がかかればかかるほど身軽になる」。

昨日の決勝の最終滑走。平野さんは五輪史上初の高難度の技を身軽に決め、逆転で金メダルをつかんだ。ミスは許されない。でも大技を成功させなければ。手に汗握る場面にくぎ付けになった。ここで想起されるのが昨夏の言葉である。二刀流への挑戦は、夢に向かって歩むため、あえて自身に課した負荷だったのか。