3/23 需給逼迫警報

11年前のいまごろ、ネット空間では「ヤシマ作戦」が話題になっていた。アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」になぞらえた節電運動だ。日本中から電力を集め、敵を倒すためのエネルギーに使う。そんな物語にちなんだ電力危機回避の運動が広まったのである。

当時はみんなが、東日本大震災直後の混乱のなかにいた。首都は停電におびえ、切迫感も並大抵ではなかった。そういうなかでの節電意識の高まりだったのだ。さて、あれから長い時間が流れたが、電力事情は改善しただろうか。東京電力東北電力管内にいきなり出た「需給逼迫警報」に、誰もが大いに戸惑ったはずだ。

さきの地震による発電所の停止と、時ならぬ寒さが重なったせいだという。岸田首相が節電を強く呼びかけ、ネットには久々に「ヤシマ作戦」の言葉があふれた。それでも世間の反応はいまひとつで、大規模停電と紙一重のまま夜が更けた。日本人が自分勝手になったからではなく、この脆弱さがピンとこないからだろう。

11年を経て、いまだに綱渡りの需給を続けているとは残念な話である。あのころ叫ばれた送電網の充実や蓄電池の開発はどうなったのか。こういう事態に直面して、構造的な問題にあらためて気づくのだ。かのヤシマとは、日本列島を指す「八洲」の意味でもあるらしい。巨大地震をにらみ、列島を救う大きな作戦が要る。