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沖縄では、春分から5月10日前後までの梅雨入りまでの時期を「うりずん」と呼ぶ。「潤い初め」が語源とされる。寒からず暑からず、1年のうちで最も過ごしやすいころだが、悲惨な記憶も呼び起こす。77年前の1945年4月1日、米軍が本島の中西部に上陸したのだ。

以降、6月23日に旧日本軍の組織的戦闘が終わるまで、両国の兵と民間人合わせて約20万人が亡くなる苛烈きわまりない戦いが繰り広げられた。この時分に花を咲かせる「月桃」の木をタイトルにした反戦の歌がある。5番はこんな詞だ。「六月二十三日待たず/月桃の花散りました/長い長い煙たなびく/ふるさとの夏」

暮らしを彩り、元気づけてもくれる四季のうつろいが、命の危機と重なる痛ましさがにじむ。ウクライナの人々も、そんな日々を生きているのだろう。一方で遅い春には希望の光も見えるらしい。雪解け水で、大地のあちこちにぬかるみができているという。おかげでロシア軍の動きが滞り、補給も不調だと報じられている。

整備の悪い軍用車両を泥中に放置し立ち去る兵士もいると聞く。さらに、ここにきてプーチン大統領に、戦況が都合よく伝えられていた可能性が浮上した。専制国家の宿命だろう。「雪解け」が隠れていた真実をも暴き、一刻も早い停戦につながることを祈りたい。焦土にも、人々の心にも「潤い初め」が訪れますように。