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「この長征にこそ中国共産党の、全中国の運命がかかっている!!」。きのう、訃報が伝わった漫画家、藤子不二雄Aさんが1971年に雑誌に連載した「劇画毛沢東伝」の一場面だ。版画を思わせる重厚な筆致で、革命家の生い立ちから建国宣言までを描ききっている。

長くコンビを組んだ故藤子・F・不二雄さんと富山県から上京し、画業60年超。作品は多彩な分野に及んだ。「忍者ハットリくん」や「怪物くん」は繰り返しアニメやドラマになり、世代を超え親しまれている。一方、ひ弱な中学生がいじめっ子や理不尽な大人に仕返しする「魔太郎がくる!!」もコアなファンをつかんだ。

日常に不満を募らせる大人を「ドーン」の声で異界へいざなう「笑ゥせぇるすまん」。奇妙な後味がクセになってしまうシリーズである。少年漫画に初めてゴルフを持ち込んだとされる「プロゴルファー猿」も忘れがたい。だが、なんと言っても偉業は、断続的に40年以上続いた自伝的作品「まんが道」とその続編だろう。

実は藤子Aさん、若き日から日記や家計簿を丹念につけていた。おかげで駆け出しの石ノ森章太郎赤塚不二夫ら当時、東京のトキワ荘に集った面々との交流が作品にリアルに再現されている。今後も後進の励ましとなるはずだ。世界語となったMANGAのパイオニアがまた1人、世を去る寂しさ。いかんともしがたい。