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少し前まで日曜日の早朝のNHK総合テレビで「10分で巡るにっぽんの廃線」という番組が放送されていた。今は運行を取り止めた各地の鉄道が、車両や沿線とともに紹介されていく。古い映像の乗客の表情には、鉄道と暮らしが結びつく安堵や喜びがみられた。

遠からぬ将来、番組がリニューアルするとしたら、新たな路線がいくつも加わることになるのか。JR西日本はこのほど、利用客が少ない線区の収支を初めて公表した。17の路線で2017〜19年度の赤字が年平均で248億円に及んだそうだ。コロナ禍で連結の営業損益もふるわず、存廃の協議を進めたい考えがにじむ。

ここ数年、テレワークの導入や旅行客の減少で鉄道の利用にも大きな変化が起きた。地方の路線の収支を都市部の儲けで補うのも難しくなっているという。JR東日本も「議論の材料として提供できれば」と路線ごとの収支の公表の検討に入るらしい。道路網の整備や人口減少のなかで、公共性と経営は両立できるだろうか。

鉄道には、モノの輸送とヒトの移動の効率アップに加え、見知らぬ街や人々との架け橋として、地域の誇りや夢を支えた面もあったはず。かつての乗客の笑顔にも表れていよう。話し合いでは、そんな視点も忘れないでほしい。それにしても、新しい路線の話題以上に廃線の方に注目が集まる昨今。どこか寂しい気もする。