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さだまさしさんが40年前に発表した「前夜(桃花鳥)という歌がある。子供がテレビニュースの戦争映像に歓声をあげる。時期的にイラン・イラク戦争か。命が消える場面を人ごととして見ることに怖さを感じるが、番組はお笑いに変わっている。そういう詞だった。

この2ヵ月、テレビやネットで戦場の風景が大量に流れた。命の感覚のまひが懸念される一方、逆の悩みを持つ人も増えたという。悲しい情報を浴び続けることで、影響を受けすぎ心が不安定になってしまうのだ。英語で「ドゥーム(悲運)サーフィン」などと呼ばれ、コロナ禍で広がり、ウクライナ侵攻が加速させた。

罪のない住民が日々死んでいく光景に無力感を覚える人も多いのではないか。2011年の東日本大震災の時、糸井重里さんは「できることをしよう」と呼びかけた。何もしないのではなく、しかし過剰な荷を負うのでもなく、それぞれの場所で自分のできることをする。日常生活を保つことも、できることの一つだと。

災害、病、戦争など、心を乱す事態に声高な主張が目立つ。特に自由な発信ができるネットではむき出しの言葉が力を持ちがちだ。人ごとだとしらけず、焦らず冷静さを保ち、自分のできることをする。そんな姿勢を大事にしたい。誰かを助ける試みも、日常を守る営みも、世界のバランスを取り戻すことにつながる。