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映画のスケジュールの確認は、もっぱら情報誌「ぴあ」に頼っていた。そんな熟年世代もおられよう。名画座で本誌を提示すると、料金が割引になった。もう一つの楽しみは、紙面の端の読者投稿欄だった。若者が日常の喜怒哀楽や時事問題のネタを寄せた。

これは1984年の投稿だ。「絶望的に似ているそっくりさん。専売公社の『健康のため吸いすぎに注意しましょう』とサラ金消費者金融)の『ご利用は計画的に』」。秀逸な文章には共感の和が広がった。アナログの極みだ。でも、100字程度の短文投稿は、今のツイッターにも似た交流の機能を果たしていたようだ。

もちろん、すべての投稿が掲載されたわけではあるまい。不適切な表現は編集者がボツにしたのだろう。「あのう、ブリッコって秋田じゃ、ハタハタの卵のことなんですよ」。81年の作品だ。当時、「かわい子ぶりっ子」という流行語があった。あるアイドルの身ぶりが思い浮かぶ。ほのぼのとしていて、罪がない。

米起業家イーロン・マスク氏が米ツイッターの買収を提案した。投稿の削除やアカウントの停止は言論の自由を阻害する、との立場という。世論操作にSNSが利用される時代だ。自由と規制をどう調和させるのか。そういえばあの雑誌の投稿欄は「はみ出しYOUとPIA」。ネット空間を言論の理想郷にするのは難しい。