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今から63年前の4月6日、北海道の知床沖で大規模な海難事故が起きた。低気圧の接近で、陸地から数キロの距離を戻ることができなくなったのだ。15隻が沈没・転覆し、死者と行方不明者は計85人に達する。熟練の漁師も天候急変による雪まじりの暴風の犠牲となった。

北海道総務部の危機対策局がつくる「ほっかいどうの防災教育ポータルサイト」が詳しく報告している。道内の災害事例と教訓を集めたサイトだ。温泉と火山、海の幸と複雑な海流など、この地で生きる人は「自然の恩恵と災害の二面性を理解し、受け止めて」暮らす。誰もが災害と正しく向き合えるように作成したそうだ。

知床でおととい、子どもを含む26人が乗る観光船が遭難した。浸水を伝え救助を要請した後に消息を絶ち、きのう一部の方々の死亡が確認された。恐怖と混乱を思うと胸が痛む。まずは命を救うための活動が急がれる。その後は事故が起きた原因の究明が必須になろう。気象台は一帯に暴風・波浪注意報を出していたという。

1960年代には映画、1970年代には流行歌の舞台になり、今世紀には世界自然遺産に指定された。そのたびに観光客が増え、漁業とともに地域経済を支える。冬の流氷も消え、コロナ禍からの本格回復を目指す中での事故だ。機材の不良か、人の判断ミスか、避けがたい何かが起きたのか。命を預かる者の責任が問われる。