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自転車が日本に伝わったのは幕末から明治初頭にかけてとされる。自動車より少し早い。「自転車の文化史」(佐野裕二著)によると、当初は若者の玩具扱いで、周囲からは白い目で見られていたそうだ。事故もあったのだろう。普及につれてルールも整備された。

1901年に警視庁が定めた規則は17条におよぶ。ベルを備え、夜間はライトをつけよ。これは現代と同じ。両手離しは禁止。12才未満は乗ってはダメ。かなり細かい。急な坂は下車すべし、との項目もある。歩行者中心の交通社会に現れたニューフェースをどう遇するか、苦慮したようだ。規則はその後、36条に増えた。

近ごろ往来を行く新顔といえば電動キックボードか。この連休中も都心の大通りを走る姿を見かけた。小回りが利き経済的。「次世代の移動手段」と期待され、このほど一定速度内なら免許不要とする改正法が成立した。ただ危険な歩道走行や飲酒運転も目立つという。低速といえども、人にぶつかればただではすまない。

思えば登場から1世紀以上を経た自転車だって、乗り手のマナーが成熟したとは言い難い。スマホ片手のふらふら運転や人混みを縫うように疾走する車体にヒヤリとした経験を持つ方は多かろう。技術が進展するスピードほど人の心や振る舞いは前に進まないのだろうか。それこそが子ども世代に継ぐべき大事だろうに。