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笑いは緊張の緩和によって生じる。そう説いたのは、上方落語の爆笑王、二代目桂枝雀さんである。最近、ビジネスの世界で「アイスブレイク」という言葉を聞く。氷を砕く。初対面の人が集う会議や研修の緊張した空気を和ませるコミュニケーション術のことだ。

笑いを、顧客との商談や学校の授業にも取り入れよう。そんな実践もある。講師にお笑い芸人を招く企業もあるそうだ。確かに、折り目正しい対応よりも、笑いの成分が含まれた自己紹介やプレゼンテーションは、互いの距離を縮めてくれる。でも、くだけすぎては失礼になる。そのあたりの間合いは結構、難しいようだ。

長く宮仕えをしていれば、上司や取引先から無体な要求をされたこともあるはず。むちゃぶり、というやつだ。そんなとき、「聞いてないよォ」と、心の中で叫んだ方もいるのではないか。人の嫌がる業務を誰がやるのか。「では私が」との発言があると、「どうぞどうぞ」の唱和が起きる。どこかで聞いたセリフである。

サラリーマンは日々、体を張った「リアクション芸」を演じているのだろうか。その仕事、できません。そう思っても、なかなか口には出せない。不恰好でも、やりきるしかない場面もある。へこむ時もあるけれど。そんな時は熱い風呂にこの身を沈め、気分転換しようか。そしてあすも乗り切ろう。この世は舞台だ。