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雨続きの後に注ぐ日差しの強さに、また夏がやってくると肌で感じる季節になった。地面を見て気づくのは、小さな草の芽の数々だ。ぴんと細く伸びて上を目指したり、「し」の字を逆さにした格好で土を持ち上げたり。軟らかくみずみずしい緑が、生命の息吹を映す。

そんな草の魅力を伝えるのが、初巻が出たばかりのコミック「ザッケン!」だ。「私、青春不適合者だ」。進学したてで夢中になることが見つからず、もんもんとしていた女子高生に草をこよなく愛する級友が話す。「それぞれにこの地球にいる意味があるらしいです」。命にはどれも固有の価値があるとのメッセージだ。

遠く離れた太陽から、あふれる光が地上に降り注ぐ。いかなる摂理が働いたのか。葉緑体が光の力を借りて、空気中の二酸化炭素から有機物をつくるメカニズムが地球に登場した。そうしてできた植物の体が、地中深くで気の遠くなるときを経て資源に変わる。エネルギーの壮大な変転。その起点の一つを、草の姿に見る。

雑草魂という言い方がある。稲垣栄洋著「雑草が教えてくれた日本文化史」によると、雑草をほめ言葉に使うのは日本人くらいという。オオバコは、靴の裏や車のタイヤに種がくっついて分布を広げる。「逆境を利用して、自らの力を変える特性をもっている」。気のふさぐニュースもある毎日。草のたくましさに憧れる。