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この連休中、ミニシアターをのぞくと、濱口竜介監督の作品を特集していた。「親密さ」という映画にこんなセリフがある。「言葉は想像力を運ぶ電車です」「世界って情報じゃないでしょ?」。対話を手段にした作品である。4時間余りの長尺だが満席に近かった。

映画館の暗がりを出ると、世界が今までと少しだけ違って見える。そんな体験を求め、私たちは劇場に足を運ぶのだろう。人は言葉を媒介に理解し合えるのか。相手に届かなかった言葉はどこに漂着するのか。長回しを多用したセリフ劇の余韻に浸りたくなった。日も暮れた。酒場で一献傾けよう。ぜいたくな時間である。

1万本以上の作品が定額で見放題。動画配信サービスの普及により、人びとは生涯を費やしても消費しきれない膨大なコンテンツの海を漂うようになった。でも時間がない。話題の韓流ドラマなどを早送りで見る人も結構、いるらしい。とりあえず、周囲に乗り遅れないよう、粗筋だけを把握する人が増えている。

そんな需要に支えられているのが「ファスト映画」だ。作品を10分程度に編集して動画共有サイトに投稿。広告収入を稼ぐ。これを見たから、もういいや、となれば被害は深刻だ。映画会社などが刑事、民事の両面で投稿者などの責任を追及し始めた。映画は、処理すべき「情報」ではないはずだ。劇場で楽しもうじゃないか。