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「次は渋谷区の17歳、匿名希望さんからのリクエストです」。その昔、若者がラジオの深夜放送に夢中だったころ、ディスクジョッキーがこんなふうにハガキを紹介するのをよく聞いた。「それではミッシェル・ポルナレフシェリーに口づけ』」などと続くのだ。

リクエストカードは、曲名を記すだけのものではなかった。思春期の悩みや自分の小さな秘密、そしてもちろん恋心を抱く相手へのメッセージ…。匿名であれば、その安心感からとりわけ多くの思いをつづることができた。そんな記憶も薄らいだ令和のいま、日本では相変わらずマスクで顔を覆った「匿顔」だらけである。

新語ではなく、ネット社会での人間関係を語るキーワードとして1990年代に登場した。それが昨今では、いつでもどこでもマスクの世相を表す言葉となっている。調査会社の日本インフォメーションの調べによると、コロナ禍が収まった後もマスクを使うという人が「必ず」と「できるだけ」を合わせて54%にものぼる。

政府も屋外でのマスク緩和をうたっているのに、老若男女、匿顔ばかりだ。往年の「匿名希望」さんみたいに、それによって伝えにくいことを伝えられるわけでもない。むしろ互いに表情が読み取れず、ほとんど「匿心」状態である。さあ、そろそろ考えを変えて。匿名コラムとして、ここは率直に書いておこう。

 

コロナ禍が収まった後もマスクを「必ず」あるいは「できるだけ」すると答えた人が日本インフォメーションセンターの調査で54%にのぼるらしい。たしかに政府も緩和をうたっているが、老若男女、みなマスク姿である。かつて「匿顔」という言葉があった。ネット社会での人間関係を語ったものだが、いまではマスクの世相を表す言葉になっている。さらにマスク姿では互いに表情も読み取れず、ほとんど「匿心」状態である。そろそろ考えを変えたいものだ。